20240308 エベレストも、ごみがあちこちに!?

SDGs考
富士山もオーバーユース気味でごみ問題が起きていたような

はじめに

何回かにわたってプラスチックごみについて述べてきました。海洋を漂流するごみや、プラスチックの原料となるナードルについて、これは樹脂粒子ですが、この運搬過程での流漏出を防ぐ試みが採られていることなどについて触れました。そして、海底6000m の深海にも、食品包装のプラスチックのパッケージが発見されていることも述べました。今回は、世界最高峰のエベレストもゴミの害に見舞われているとの記事を読んだので、そのことについて述べてみたいと思います。

エベレストへ人類初の登頂達成

「エドモンド・ヒラリー」、ニュージーランド人で、人類初にエべレストの登頂達成を実現させた方です。時は1953年です。確か、登頂達成した日は、先にご逝去されたエリザベス女王の戴冠式の日であったような。イギリス人ではないから関係ないだろ、とはなりません。ニュージーランドは、英連邦に属してますからね。エベレスト登頂の方は女王の戴冠式の日に人類初のエベレスト登頂達成です。劇的ですね。さぞやイギリスの国威発揚となったことでしょう。

シェルパの長老は言っています

この1953年のエベレスト登頂を助けたネパール・シェルパ族カンチハ氏はご存命で、ガーディアン紙で述べています、「頂上は、いつも人だかりがして混み合っている」。ピークを狙うために陣取るベースキャンプでは、各国からの登山パーティーで登山隊で更に混雑状態であると言います。2023年のエベレスト登頂者数は667人で、この個々の数には、ガイド役のサポート隊がいるわけで、少なくとも1,300人以上が登頂していることになります。しかも登山シーズンは3 月から5 月の3 ヶ月です*1。ここらへんの実情は、ハラの森・管理人である筆者は、登頂経験がないので実感としては解りません。しかし、元来そのような高所に1,000人を超える人が一時的ではあっても、生活する条件は整っていないわけで、環境に与えている負荷が高すぎることは推測できます*1。

混雑するほど人が来るのですから、当然ごみが排出されます。自分で持ち込んだごみはすべて持ち帰るということになっていますが、山にはごみが散乱しているようです。缶詰の容器、食品のラッピングが捨てられていて、クレバスー氷河や雪渓の裂け目ーへの投げ捨てもあるとのことです*2。

*1 By Associated Press in Kathmandu. 2024, March. Mount Everest is too crowded and dirty, says last living member of Hillary team

Mount Everest is too crowded and dirty, says last living member of Hillary team
Kanchha Sherpa, 91, says more respect should be shown to sacred peak that has been climbed thousands of times since 1953 ascent

*2 ibid.

エベレスト登山には高額な費用が必要

エベレストのような高山を登ろうとする人は、いわゆる “先進国”と呼ばれる国の出身の方がほとんどでしょう。入山料だけでも、個人申請の場合、25,000USD(約350万円)は掛かかります*3。公募隊という制度を利用すれば、グループ申請ということで、一人当たり10,000USD(約140万円)であるそうです*3。これ以外に、渡航費や登山関係の装備品、滞在中の交通費や食費、宿泊費などと嵩んでいけば、500万円以上は掛かるのではないでしょうか?そして、エベレスト登山の前には、トレーニング的にいくつかの山に出かけて、実践練習を積みながら自らの登山技術の経験値を上げていかねばならないだろうし。とにもかくにも、高額な出費なくしては実現できないことは明らかで、資金や時間に余裕がないとエベレスト登山は難しい。

*3 国際山岳ガイド 近藤謙司『エベレスト登れます』、2014年、産業編集センター

“先進国” の人間は自らの行動を制御することができないのか

かつては貴族のような “ハイソ”に限られていた登山が、お金を払えば可能となった時代になったと言えます。名目上は万人に門戸が開かれているのですから。一般市民が登山できるようになったことは素晴らしいことです。しかし、市民の一人ひとりが節度をわきまえて、自らを律する姿勢を身に着けていないと、当地に行って、場所をわきまえない行動をとってしまう可能性があります。高額なお金を払っているのだから、好き勝手に振る舞う権利があるような考えを抱いてしまっているのかしら、と想像してしまいます。過酷な条件下となりうるので、ごみの管理が疎かになってしまうこともあるかもしれない。しかし、ごみの管理は必須事項、悪天候で、やむをえずごみを放置となるような状況に陥ることを避けて行動することが基本であるべきである。あるいは、登頂を達成したら、身軽に下山しようとごみを放置するのだとしたら、それこそ、わがままで無粋な登山者だ。

エベレストはシェルパの人たちにとって大いなる母

ケンチハ氏は言います、「登山者たちは山(エベレスト)を汚すべきでない。山は、シェルパの最も偉大な神であるから、彼らは私たちの神を汚すべきではない。しかし、登山者たちはタバコを吸い、肉を食べ、それらを山に捨てていく」*4。現代の日本人のみならず、エベレスト登山にやってくる”先進国”の連中は、シェルパのような方々がもっている聖域的な場所の感覚が理解できていないのでしょう。それどころか、”後進的”とさえ思っているのかもしれません。

*4 ibid.

しかし、シェルパのような世界観の方が、山の環境は美しく保てます。”先進国”からの訪問者は蛮族的にシェルパの世界を汚しています。登山者たちは、よそ者であること、シェルパの世界にお邪魔している存在であることを自覚すれば、ごみを捨てるという行為にはならないとは思うのですが、”先進国”の人間の病的さを露呈させているということなのかもしれません。

本日は、これぐらいで、ごきげんよう。

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