20231117 メタンガスについて考える

SDGs考
日常生活で出る生ゴミ。これが電力源や熱源になる。

先の記事の復習

先日、食品廃棄物の処理について述べた記事で、アメリカでは、すぐさま収集された食品は、すぐに堆肥化されるのではなく、いったん下水処理場に運ばれて、嫌気性微生物を利用して分解される過程でメタンを発生し、そのメタンを、食品廃棄物処理場で、あるいは発電所に送られて、エネルギー源とすることを方法を採用している、ということを紹介しました。そして、日本でも一部の都道府県にこの方式を採用している工場施設があることについても触れました。

ところで、このメタンガスについて理解を深めておくことは、よりよい環境問題に対する施策についての視点を与えてくれそうなので、今回はその機会にしてみます。

メタンガスは、エネルギーとして使われていること

「メタン」という言葉を、都市ガス利用の方であれば、聞き覚えがあるのではないでしょうか? 都市ガスの主成分はメタンです。ガスコンロを着火させることで、下のような化学反応が起きています。メタンの化学記号はCH4が、燃焼することでO2、酸素と結びつきます。

CH4 + 2 O2 —> CO2 + 2 H2O

結果、水分子H2O と二酸化炭素CO2 ができてしまうわけです。メタンや二酸化炭素が温室効果ガスであるからといって、私たちの生活していく上で使っていかねば、どうにも立ち行きません。ここに難しさがあるわけです。

メタンガスは、どうして問題となってしまうのか?

先述の記事の著者も、生ゴミの分解を下水から出る汚物と混合させることで発生するメタンを資源として求める方法が行われていることを知って疑問を感じていました*1。なぜなら、今日の地球温暖化対策で最もよく聞くフレーズは「CO2の削減」ですが、このメタンは、20年の期間で、CO2に比べて80倍もの温暖化させる能力を持っているからです。大気中のCO2濃度が高まっているのと同様、メタンも産業革命前からすると2.5倍も濃度が高くなっています。ということで、科学者たちはその放出量を2030年までに半減させる必要があるとしています*2。

*1  US cities say they turn food waste into compost. Is it a problem when they don’t?; by Whitney Bauck,
Wed 30 Aug 2023 11.00 BST

US cities say they turn food waste into compost. Is it a problem when they don’t?
The scraps in your bin marked ‘compost’ may end up as methane. Here’s what that means

*2  Methane reduction holds key to averting climate catastrophe ; by Paul Brown,
Fri 9 Jun 2023 06.00 BST

Methane reduction holds key to averting climate catastrophe
Halting known sources, such as leaky oilwells, could slash projected emissions by half by 2030

それでも、メタンを生成し資源として利用しようとするのか?という疑問が湧きますが、どうも以下の理由でありそうです。

食品廃棄物や下水から出る汚物を嫌気性微生物で分解させることで生成されるメタンを、エネルギー源として燃焼させれば、CO2となり温暖化能力が低くなる。CO2に関しては、焼却しても埋めることでもCO2は同様に発生するので、”再生可能エネルギー”として活用したほうが得策である。加えて、エネルギー源として燃焼させれば、処理場のエネルギー資源としても利用できるので、廃棄物処理の費用を減らすことができ、経費の側面からしても益する点が多い、ということ。

ハラの森管理人・筆者の考察

私たちの生活していく中で、電源や熱源を得るためにCO2が出てしまうわけですが、それへの対策は講じられています。メタンを燃焼させ電力を得る。その過程で出るCO2をメタネーション(methanation) という技術を用いて、CO2の排出量をプラマイゼロにすることが理論的に可能になる、ーいわゆるカーボンニュートラルー、合成メタンを生成するという方法を、大手ガス会社が研究を進めています*3。

*3 「 Go! ガステナブル」、ーこのサイトでガス会社のメタネーション研究が紹介されている。

GO!ガステナブル|日本ガス協会
ガスでサステナブルな未来を。2050年のカーボンニュートラル化の実現を目指し、取り組んでいる3つのアクションについてご紹介します。

読者の方々、食品廃棄物を資源として利用することに関して法律があることを知ってますか? 知っている方は、現在の社会の事情を把握している社会通の方でしょう。ハラの森・管理人である筆者は、コンポストのことを考えることをキッカケにしてググっている中で、環境省のサイトで知った次第です。

2000(平成12)年に、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」、別名「食品リサイクル法」が既に制定されています。以降、改正を経て、世界的にSDGsの動きなどもあり、2019(令和元)年、改めて「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」が制定されるに至っています。

筆者が考えるのは、大手ガス会社が行っているような大規模なプラント設備で大量の電源や熱源を生産していくことは、都市化が進んだ地域では必要であると思います。そして、合成メタンを生成できる技術力を日本が備えていることは、安全保障の側面から考えて研究を進めていくことは得策でしょう。

しかし、こうしたエネルギーの由来を理解できておらずに、国家や大手企業に任せっきりとなってしまうと、それは危険ではないでしょうか? 地方で都市ガス設備が整備が普及していない場合は、集落ごとの簡易水道的な、小規模で経営できるエネルギー設備が必要であると考えます。自分たちのエネルギー資源を、市民が事情を理解して経営していく動きが必要ではないかとも思います。同時に、「食品リサイクル法」の基本方針について、一部の見直しが閣議決定でなされています。実際にググって資料を閲覧できるので、現時点で問題はないのですが、私たちの生活の根幹的なエネルギーについては、状況を理解しておくことは必要であると考えます。もちろんのこと、筆者自身、難しい化学反応の解説までは理解できていませんが、概略ぐらいは知っておいたほうが安心です。面倒くさいですけどね。

以上のことからして、筆者は、コンポスト活動をお勧めしたく思うのです。その活動を通じて、化学に親しみも湧いてきますし、具体的に食品廃棄物の変化も実感できます。コンポストの処分について考えて、メタンという物質の扱いという問題にぶち当たり、「メタンとは何ぞや?」となり、メタネーションという考えや、食品リサイクル法についても知る機会につながります。この習慣が身につけば、政治や経済などのニュースを自分に関係することとして理解できるようになるかもしれません。

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