20240112 あれ、落葉してない木の方が多い?

樹木のこと

はじめに

前回椿のことに関しての記事を載せました。今回は、椿を一つの契機として、椿と類似した点を持つ植物、冬でも緑の葉をつけている樹木の有り様について考える機会にしてみたく思います。

ハラの森にある木を調べていくと、意外なことに冬でも葉を落とすことのない常緑樹が多いことに気がつきました。というよりも、落葉樹の方が少ないということが、ハラの森ある地域の実情であるように思えてきました。「意外」であると思ったのは、ハラの森は南関東に位置します。温帯に属すであろうから、存在する多くの樹木は、基本的に落葉樹が一般的であろうと勝手に思い込んでいました。が、先の椿の記事を書いてから、このことが先入観であることに気がつきました。実際に自分の周囲を見回してみれば、南関東にあるこの地では、冬でも葉が茂っている木々が多いことが判ります。

常緑樹の生存環境はどのようなものなのか?

現実からすれば、南関東のような、寒い冬でも氷点下になることが頻繁ではない地域で、日本海側で降雪している同日であっても、関東の平野部は晴れであることは、日頃の天気予報からも皆さんご存知の通りです。ここ関東地方の南部にあたるこの地域は、ハラの森管理人・筆者が参考にする本によれば、暖温帯に位置します。ちなみに、日本列島は沖縄の亜熱帯、そこから暖温帯、冷温帯、北海道の端部の亜寒帯に区分されます。そして更に、暖温帯の植生は、降雨量が多い地域と少ない地域とに区分けされ、前者に典型的な植生は照葉樹林、後者のそれは暖帯落葉樹林となります*1。

世界の生態気候区分図〔図〕吉良竜夫作成; 「気候区分」>コトバンクに掲載の参照図からの引用:https://kotobank.jp/word/気候区分-677382#goog_rewarded
『生態学からみた自然』(1979年・河出書房新社)による

*1 沼田眞/岩瀬徹 『図説 日本の植生』、講談社学術文庫、2002年

照葉樹とは

ここで「照葉樹林」という言葉を使いましたが、言い換えれば「常緑広葉樹」です。わざわざ新たな言葉で表現するのは、日本の常緑広葉樹の特異性を示す目的があるようです。熱帯にあって一年中緑の葉をつけているのも常緑広葉樹ですし、地中海地域の特色の一つに思われるオリーブの木も、冬に緑の葉をつけていて常緑広葉樹ですが、日本の亜熱帯や暖温帯にある常緑広葉樹とは性質が異なっているので、そうした事情を差別化しているのだと筆者は理解しています。常緑広葉樹の種類、日本の常緑広葉樹、照葉樹林の分布については下記を参照されたし。

*参照: 九州森林管理局 <「森林への招待」<「綾の照葉樹プロジェクト」<「綾の照葉樹林」

綾の照葉樹林:九州森林管理局
九州森林管理局ホームページ

照葉樹の特徴をまとめておきますと、常緑広葉樹で、葉に光沢、ツヤがあり、葉に厚みがあるので硬く折り曲げるとそれがよく解ります。ヘナっとする感はありません。話題とした椿の葉を想像してもらえれば、葉の形や質感が解ると思います。

照葉樹を遠方から眺めた感じは、葉が茂った様子の形状が、夏の入道雲のようにモコモコした感じです。近隣の公園に大きなクスノキがあれば、遠くから見てみてください。多分、「あ〜、なるほどなぁ」と思えるはずです。

紅葉狩りをするなら

繰り返しになりますが、ここハラの森がある南関東は暖温帯に入り、植生的にこの照葉樹林帯に区分けされます。照葉樹は常緑広葉樹の部類なので、南関東の冬ぐらいの寒さでも葉を落として越冬するということはありません。ですから、冬であっても周囲が緑の木々でいっぱいということは当然と言えるのです。

ところで、読者の都市部にお住まいの方で紅葉狩りに出かけた経験がおありの方もおられると思います。どちらに出かけたでしょうか? 多分、◯◯渓谷とか△△山といった場所ではないでしょうか? 例えば、紅葉を観に出かけた地域が暖温帯にあって照葉樹林帯に入るような場合で、なぜ落葉する前の紅葉の姿を、つまり多くの落葉広葉樹を見ることができるかと言えば、◯◯山や△△山のような場所は、基本的に内陸部に在って、沿岸沿いの平野部と比較して標高も高いので、冷温帯的な気候条件と類似しているのです。

暖温帯に住む方が、樹木がたくさんある近隣の公園などに紅葉を観に出かけて行ったとしても、いちょうの黄色や、部分的に何本かの木の葉が赤くなった姿を観られたとしても、見渡す一面が赤や黄色に色づく紅葉を観られる機会は得られそうにありません。筆者は考えなしに紅葉を観に出かけたことがありますが、観られなかった経験がありました。その時に、「なんでだろう?」と調べていれば、もう少し賢明になれたであろうに・・・。考える習慣がなかったことを反省します。

照葉樹林帯に入る地域にお住まいの方は、近隣の里山的な緑地での紅葉観賞は難しそうです。紅葉狩りをするなら、落葉広葉樹がたくさん自生する山や渓谷を探してお出かけください。

さいごに

太平洋側では宮城南部以南、日本海側では新潟以南、それぞれの沿岸地域の自生する樹木は、常緑広葉樹、つまり照葉樹です。こうした地域では、冬でも緑の景色が基調となっているはずです。ハラの森の周辺で紅葉する落葉樹を見かけることもありますが、南関東の平野部で面的に紅葉を見る機会は得られないでしょう。これは気候区分の条件が照葉樹の生育に適している環境であるからです。ということで、南関東の平野部にあるハラの森の周囲が、冬でも緑の木々が多いのは、暖温帯に位置し、そこの植生は照葉樹が典型的であるからです。

ということで今回はこれぐらいで。ごきげんよう。

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