20240412 植物の分類別けについて

樹木のこと

はじめに

ハラの森には、以前記事にもしましたが、クスノキ [ 楠、樟 ] があります。植物学的に言えばクスノキ科クスノキ属、世界的に通用する形で言えば “Cinnamomum camphora” と言います。

植物を学問的に分類する際によく目にする、この「科」、「属」という分類について、ハラの森の管理人である筆者は詳しく学んだ憶えがありません。一度、基礎事項だけでも認識しておく必要がありそうです。ということで、今回はこのことについて考えてみます。

植物を分類するということ

植物の分類は、分類学 taxonomy という学問分野が担っています。分類学とは、「生物の基本単位である種を認識して記載・命名し、さらにはほかの種との関係を整理する学問」*1、です。そもそも分類する必要って何でしょう?・・・読者の方々、自分なりの答えがありますか? 

筆者が考えるに、人間は周囲の環境から有益なものと有害なものとを区別、識別して、多数の動植物などを類似点から類型化する作業が必要であった、ということでしょう。こうしたことを通じて、自分の周囲の環境、世界の理解を深めたはずです。食用に適う食材と外観が似ている草や実を食して、それらの毒気に気持ち悪くなったりしたことは数えきれないほどあったことでしょう。ふぐにあたって亡くなった人はかなりいたでしょう。こうしたことが出発点として動植物の分類が必須の事項として浮上したと推測できます。

加えて、外国出身の方と会話をしている際に、「クスノキ」と和名を言っても通用しそうにはありません。相手方の国の言語でクスノキの木を意味する単語で言うか、分類学によった名称で表現するしかクスノキの意味を伝えることはできません。この後者の分類学による名称は、世界的にほとんどの人は馴染みがないでしょうから、すぐさま双方が理解はできないでしょう。しかし万国共通です。辞書や図鑑で調べることで、話者が意図するクスノキを聞き手側も理解することができます。分類学による表記は万国共通です。

*1 伊藤元巳 『植物分類学』 2013年 東京大学出版会

学名の構造

クスノキを例にして、分類学の表記について解説してみます。

樹木を紹介するときにお世話になっている、林先生の著書で、樹木紹介がどのようになされているのか見てみましょう*2。クスノキの頁で以下のように記載されています。

① クスノキ [ 楠、樟 ]
② Cinnamomum camphora
③ クスノキ科クスノキ属の高木

部分別に解説していきます。

① クスノキ [ 楠、樟 ] :和名の名称。日本では、この名称が「種」の和名で樹木名となる。
② Cinnamomum camphora :Cinnamomumー「属」名;camphoraー「種小名」
cf)「種小名」とは種の特徴を表す語。camphor(名詞)の形容詞的な語形になっている
③ クスノキ科ー「科」は属の上位分類の階級;クスノキ属の高木

ある植物を学名で表現する際には、
Cinnamomum (クスノキ属/ニッケイ属ー2通りに訳されることがある。ちなみに Cinnamomum のスペルから推測できるように、カプチーノの泡の上に振り掛けることもあるシナモンの起源となる木のことだ):種の属する属名 genus を先に大文字で記し 、そしてcamphora :属内の1種を指示する「種小名」 species epithet という2語を以て、その植物を特定します。この表記方法は二名法と言いいます。

私達が日常的に樹木のことを話す際に言っている樹木の名称は、「種」の名称を使っているわけです。英語名では “camphor tree” あるいは “camphor laurel” と言い、 “camphora” とスペルは全くは同じではありませんが、 学名の “camphora” と語幹が同じことが解るでしょう。基本、日本でも世界的にも「種」の名を、日常語としての植物名としていることが解ります。

*2 林将之 『葉で見分ける樹木 増補改訂版』 2010年 小学館

学名の構造ー概容

では、植物を分類する全体的な枠組は以下の通りです。

(ドメイン domain) > 界 kingdom > 門 phylum > 綱 class > 目 order > 科 family  亜科 subfamily
> 属 genus  亜属 subgenus > 種 species > 亜種 subspecies > 変種 variety ; 品種 forma

‐これらの各階層をtaxonという。

クスノキを上記の階層に沿って記せば、

植物界 Plantae > 被子植物門 Angiospermae > モクレン綱 (双子葉植物)Magnoliopsida ;
モクレン亜綱 Magnoliidae > クスノキ目 Lauralles > クスノキ科 Lauraceae > クスノキ/ニッケイ属 Cinnamomum > 種名:クスノキ camphora *3

と、以上のようになります。

ドメインは「生物」という範疇で、細菌などがここに含まれてくる概念です。樹木の解説にあたり、そこまで詳細に遡ってい記載されている例を筆者は見たことがありません。文章内での解説では、「科」から記されていることが多いように思います。ヒイラギの場合であれば、モクセイ科モクセイ属のような感じです。

*3 「植物分類表;『理科年表 2023 (机上版)』令和4年 丸善出発株式会社 と Wkipediaを参照して作成

おわりに

植物の学術的名称は、種の名称が基本となっていて、植物を同定する最後の2階級ー属名と種小名ーを利用して表現されるということです。日本においては「科」の階級もしばしば目にします。学名を紹介するときには、種の名前がまず提示され、次に「〇〇科の✕✕属」という表記があって、その植物の特徴、「高木」「常緑広葉樹」といった解説が続きそうです。

まあ、知ったから何? とお思いになるかもしれませんが、一度は確認しておくと、学問的に植物や生物を考察するときの示唆が得られそうです。ということで、今回はこれぐらいにします。ごきげんよう。

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